股関節は、体の中心部に近い関節で、非常に大きな可動域を持っています。その可動域を実現しているのは、球状の関節と、その大部分を占める軟骨です。この軟骨が痛んでしまうと、可動域が狭くなり、運動に痛みを生じるようになります。頻度として高いのは、変形性股関節症や関節リウマチなどです。股関節の骨が突然壊死する大腿骨頭壊死症も比較的頻度の高い疾患ですが、発症機序が未だに解明されておらず治療は手術に頼らざるを得ないこともあります。
また、骨粗鬆症が進むと、股関節は転倒などの軽いけがでも容易に折れてしまう特徴があります。骨折した場合は、多くは手術が必要となります。 いずれにせよ、痛みが出現した場合には、早期の受診をお勧めします。

日本人では一般に寛骨臼形成不全という股関節の成長の不具合が原因で発症します。また、正常な発育であったとしても、運動量や体重による負荷で、変形性股関節症になる場合もあります。 症状が軽い場合は、運動療法や内服が適応になります。形成不全が原因にあった場合は、進行的に悪くなる場合があり、手術が勧められることもあります。その際は、年齢や股関節症の進行具合で、治療は主に骨切り術と人工股関節置換術が適応になります。

高齢者が転倒した際に受傷しやすい骨折のうちの一つです。痛みのため、歩けなくなることが大半ですが、中には歩行可能な方もいらっしゃいます。保存的治療では治癒は難しい部位で、手術をしない場合は生活レベルが著しく悪くなることや、余命が短くなるとの報告もあり、高齢者であっても手術が推奨されます。リハビリに長期間かかるような無理のかかる手術は体力的にも厳しい面があり、できるだけ低侵襲で疼痛の少ない手術が望まれます。当院では、低侵襲手術を積極的に行っており、短期間での退院も可能になっています。骨粗鬆症がベースにあることが多く、骨粗鬆症の治療もあわせて行うことが重要です。

股関節の軟骨や骨が破壊されて、リハビリや投薬で疼痛の改善が期待できないときに行われる手術です。人工関節の設置の仕方は、様々な工夫があり、それぞれ長所や短所があります。当院では、患者様に負担の少ない前方から侵入する手術法を行っており、その結果、短期間の入院（術後5日程度）で、日常生活に復帰可能です。また、両側を同時に手術することも可能です。手術の習得に時間がかかるのが欠点ですが、当院では、経験ある股関節専門医が複数おり、万全の体制で手術を行っています。

片側

【術前】

【術後】

両側

【術前】

【術後】

寛骨臼形成不全の方に対し、骨の形を矯正することで、痛みを取ったり変形性関節症への進行を遅らせたりする方法です。筋力のしっかりした関節症の進んでいない若い方に適応になります。関節症が進んでしまうと、矯正しても疼痛の除去ができないことが多く、その場合は人工股関節置換術が勧められます。骨切り術は整形外科手術の中でも難易度が高く、難しいのですが、当院では、できるだけ回復の早い低侵襲の骨切り術を行っていて、手術直後から荷重歩行練習を開始し、2～4週間での退院を目指します。

【術前】

【術後】